昔、インドにジャナカ王という王様がいました。そして、その家臣にアシュタバクラという者がおりました。
王様から、「これについて、おまえはどう思う?」と聞かれると、アシュタバクラはいつも起こることは、すべて最高でございますと答えました。
王様は、そんなアシュタバクラをとても信頼し、いつもそばにおいていました。そして、他の家臣たちが、そのことに嫉妬して罠をしかけたのです。
ある日、王様が手に怪我をしました。いじわるな家臣たちが、アシュタバクラのところに行き、「王様が怪我をされたことを、どう思う?」と聞きました。
アシュタバクラは答えました。「起こることは、すべて最高です」
家臣たちは、このことを王様に告げ口しました。
「王様!アシュタバクラは、王様の怪我のことも最高と言っております。」
それを聞いて怒った王様は、アシュタバクラを牢屋に入れました。
そして、その日は狩りの日でした。王様は他の家臣を連れて狩りに出ました。
王様は一人で森の奥深くにまで入り、そこで“人食い部族”に捕まってしまいました。その部族は、儀式の時に人を生け贄としてささげ、火あぶりにするのです。
ところが彼らは、火あぶりの直前になって、王様が手に怪我をしていることに気づきました。傷ものは生け贄にできないので、彼らは王様を放免しました。
無事に帰って来ることができた王様は、すぐにアシュタバクラを牢屋から出して、あやまりました。
「おまえが言ったとおり、わしが手に怪我をしたのは、最高のできごとであった。しかし、そんな大事なことを教えてくれたおまえを、わしは牢屋に入れてしまった。そのことを悔やんでいる。どうすれば、この過ちをつぐなえるだろうか?」
すると、アシュタバクラは言いました。
「王様、私はいつも、起こることはすべて最高だと申し上げているじゃありませんか。もしも、私を牢屋に入れて下さらなかったら、私はいつも狩りでは王様の側から離れないので、いっしょに捕まっていたことでしょう。そして、怪我をしていない私は、生け贄になっていたことでしょう。だから、牢屋に入れていただいて、最高だったのです。」
これを聞いて王様は悟りました。
「そうか!人生で起きることは、本当にすべて最高なのだ。一見よくないことのように見えても広く見れば最高なのだ。そして、そのことを信じていなければ、それに気づかないんだな。」
人生で起きることはすべて必要で必然でベストなこと。
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