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▲ オフの予定から先に入れる
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私は世界各国のスキー場やダイビング・スポットで、これという
ところはあらかた制覇してきた。
そういうところで日本人に会うこともあるが、職業を尋ねると、
たいていはレストランのオーナーや自由業といった人たちで、
サラリーマンはまずいない。
長野や新潟の山の中で会うスノーモービル乗りは、普段は工事現場
にいたり、雪かきが仕事、という人も多い。山の上で走り回って、
さらに極寒のなかでバーベキューを楽しんでいるその仲間達の
なかにサラリーマンを見たことがないのだ。
そういうときは、日本のサラリーマンはいったいいつ人生を楽しむ
つもりなのだろうと、複雑な気分に襲われる。
サラリーマンが危険なのは、何も考えずボーッと働いていると、
次から次へと仕事が入ってきて、気がつけば予定表が、先の先まで
仕事でいっぱいになってしまうというところだ。
上司を気にして、部下のふがいなさに悩む。平日は仕事に追われ、
週末は疲れきって「一日中ゴロ寝」のような生活になってしまうの
である。じつにもったいない話だ。
また、そういう生活に慣れてしまうと、サラリーマンでいるうちは
仕事人間でも仕方がない、楽しむのはリタイアしてからという発想
しかできなくなってしまう。
しかしながら、六十歳を過ぎて、「さあ、人生をエンジョイしよう」
と思ったところで、いったい何ができるというのだ。遊びだって
若いころからの下地がなければ、楽しめはしないのである。
いきなり奥志賀の五メートルを超える雪の中にスノーモービルで
行ったって、命が危ないだけだ。
定年後の趣味に釣りを選んだとする。いくらカーボンファイバー製の
高級な釣竿を揃えたところで、しょせん初心者、何年もやっている人
にはかなわない。
同じ釣り場で、かつての自分の部下のような年齢の人がどんどん
釣るなか、自分だけが釣れない日々が続けば、上達する前に嫌に
なってしまうことだろう。
結局、いまを楽しめない人は一生楽しめない。現時点で好きなこと
がやれていない人は、第二の人生でもやっぱりできないのである。
でも、現役のサラリーマンが、仕事もプライベートもともに充実
させるなどということが現実にできるのだろうか。
できるに決まっている。それにはまず、「本当にやりたいことは引退
してからやればいい」「時間ができたら、その時間を趣味に充てる」
という発想を変えることだ。そして、オフを充実させたいと本気で
思うなら、オフの予定から先に入れてしまえばいいのである。
私はやりたいことがあれば、一年のうちのどこでそれをやるかを先
に決めて、年初に休みをとってしまうことにしている。さらに、
ここは仕事を休んでこれをやると決めたら、その予定は何があっても
動かさない。こうやって、一つひとつ確実に実現していくのである。
さらに、毎週末の金曜夜から土曜にかけては、自分の趣味に充てる
と決めている。趣味といっても私の場合、夏はバイク、冬はスキー
かスノーモービル、それにボートやジェットスキーとたくさんある
から、このように決めておかないと、なかなか全部消化しきれないのだ。
サラリーマンだって同じようにできないことはないだろう。この日
は残業をしないと決めて、先にそこにプライベートの予定を入れて
しまえば、平日だってやりたいことはできるではないか。
ところが、私がこういう話をすると、それは大前さんだから可能な
のであって、ただでさえ忙しいのに、無理やり自分の時間をつくった
りしたら、仕事が終わらなくなって会社に迷惑をかけ、自分の評価
も下がってしまう。サラリーマンは仕事優先が当たり前なのだと
反論する人が必ずいる。
誤解してもらっては困る。私は仕事を疎かにしていいなどとはひと
言もいっていない。仕事もプライベートも両方充実させたほうが
いいといっているのだ。
そのために、短時間で効率よく仕事ができるやり方を、本書でも
紹介してきたのではないか。
ダラダラと残業をして仕事をやった気になっているのと、仕事が
できるのとは違うということに、いい加減日本のサラリーマンは
気づくべきなのだ。
もし、残業をやめたらどうしても仕事の時間が足りないというのなら、
朝を有効活用すればいい。私は昔から、朝五時から仕事に取り掛か
ることにしている。九時に事務所に顔を出すときには、ひと仕事終
えているのが普通だ。
「あいつは朝早く来ていい仕事をしている」となれば、残業などし
なくても、誰からも文句なんていわれはしないのである。
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